最近、ビジネスコミュニケーションに関する本を読み漁っていますが、その中でもとても興味深く、一気に読みあげた本をご紹介します。
サブタイトルに
「修羅場を乗り越え相手を動かすリスクコミュニケーション」と書かれています。
「わ~ミスった」「怒らせそうだな」なんて場面で相手に話をする時に役立つ本です。
「リスク=危険」と訳してしまいそうですが、実はそうではありません。著者の西澤さんはこう説明します。
「リスク」とは「危ないこと」ではなく、「好ましくない出来事が起こる可能性」のことです。
「危険度」「危険の度合い」とも表現できるでしょう。ネガティブなことが起きるかどうかの程度を表現しています。
あくまでも「程度」ですから、本当に起きるかどうかは大きな幅があります。
ちなみに「好ましくないことを起こす原因(危害因子)」は「ハザード」と言います。リスクの大きさは、「ハザード×さらされる頻度や量」で決まります。
それにもかかわらず、リスクという言葉の本来の意味が伝わらないのは、外来語である「リスク」が日本語に置き換えられる際に「ハザード」と混同されて、単に「危険」と訳されてしまっているためでもあります。
私も思いっきり混同していました。
ある日、取材を申し込んできたTVディレクターに西澤さんはこう言います。
ネットが使える環境だと確認した上で、 私の会社のホームページを開くように電話口でお伝えして、リスクとハザードの違いを見てもらいながら一つずつ丁寧に説明しました。
「ディレクターさんが言っているのは、あくまでもそれが『発がん物質』かどうかの話で、それがガンになるという話ではありません。
お酒が良い例です。
お酒は発がん性がありますが、その発がんリスクはどれだけ摂取するかの量の話です」
なるほど。摂取量がリスクなのに、酒そのものをリスクだ言ってしまうことなんですね。
これだけをとっても、日本のあちこちで騒がれているニュースの中には「リスク」と「ハザード」がごちゃ混ぜになって捉えられているものがありそうです。
♣ちなみに西澤さんのHPはこちらです
”http://literajapan.com/risk_communication”
何よりも大切なのは、やばいことを伝える前の段階として「言葉を伝える準備」です。
先程の例でいうと「お酒は発ガン性物質があるが、リスクではない」と言っても「は?でも発ガン性物質が入っているんでしょ!」と過剰に反応して負の感情が先走り、冷静な判断が出来ない人に対して、じゃあどうするか、というもの。日本人特有の「安心安全マインド」もありますしね。(本書では日本での「安心安全」について丁寧に書かれています。これも非常に面白い!)
ではどうやったらリスクを上手く伝えられるのでしょうか。
何のために苦労して「やばいこと」を伝えなければならないかを考えてみましょう。
そもそも、伝えることのゴールは、伝えることそのものではなく、伝えたことによって、状況に何らかの変化を生むことです。したがって伝えること自体ではなく、その先の、相手の理解と納得、それによる選択や行動(変化)が目的になります。
このゴールが描けていないから、謝罪会見などではとんちんかんなことを言ったり逆ギレしたりする人が出てくるんですね。西沢さんは「共感の時代に説得は合わない」と言います。
本書ではこの共感(納得)を目指すためのコツが書かれています。言葉遣いであったり、場のセッティングであったり、アフターフォローであったり、様々です。意外と人間くさいこともたくさんあります。しかし、これらを丁寧に行うことで「やばいこと」が収まったり、上手くいったり、逆に感謝されたりすることもあるようです。
私もやばい状態になったら丁寧に実行してゆきます。